奇人・青柳有美のハチャメチャな手紙

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奇人・青柳有美のハチャメチャな手紙

 震災以前、女性の解放や性を論じた評論随筆や旧制中学の閉鎖的環境や対応を批判しまくったエッセイ『中学罵倒論』で人気を集めた青柳有美。
 そんな彼が折々に送る賀状はすこぶる変わっており、特に節分の賀状は読む方が飛び上がるような代物であった。いわく、
「全世界の国民よ、挙ってソビエートロシアを倒せ。人類の敵なり」
から文句がはじまったかと思うと、ガラリと紳士然とした一族郎党の動静や挨拶が続き最後に贔屓の芸人の賛辞が並んだ。
 特に贔屓だった市川門之助(六代目)に関しては「閣下」と称する程で、その敬称を連発した。
 そして、最後には決まったように「その卓抜非凡なる技芸を推薦するのは光栄を有し候」と結ぶのであった。
 受け取った人はこの長々とした賀状をどんな顔で読んだ事だろうか。

青柳聴霜『父断片』(日本古書通信)

 ジャーナリスト、随筆家で知られた青柳有美は真面目な顔をして奇抜な主張を吐きまくる奇人として知られた。

 そのくせ、紳士的な人でもあり、女性の権利拡大や解放をキリスト教的な立場で論じるなどやはり変わった人であった。

 当時としては珍しい女性と性や結婚論などを多く記し、震災以前のジャーナリズムや文壇ではなかなかの人気者の持ち主であったという。

 今日では戦前の女性観を知る資料になりうるかもしれない。

 一方、学問の大切さを論じながらも行き過ぎた学問へは批判の姿勢を崩さず、旧制中学の閉鎖的環境や欺瞞を『中学罵倒論』としてまとめた。時として、「世に最も傲慢不遜にして、頑迷度し難きもの」とまでいうのだからすごい。

 その態度は子どもたちにもそうであったそうで、勉強の大切さを解きながらも放任をする、というある意味で紳士であった。

 末っ子の聴霜が、歴史の本ばかりに凝って赤点ばかり取ったことがあった。

 学校から呼び出しを受けた有美は教師の「このままでは落第する」「もっと勉強をするように厳しく」という警告に対し、「あれは怠けていない。ただ教科書を読まないだけだ」と、教師をけむをまいた。

 そして帰宅するなり、聴霜にむかって「落第したって構わない、落第上等」と激励し、逆にせがれを驚かせたという(ちなみに聴霜は落第せずに卒業した)。

 ちょっといい話である。

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