貧乏下駄と岩野泡鳴

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貧乏下駄と岩野泡鳴

 友人が岩野泡鳴宅を訪れた。
 話し込んでいる内に雨が降り始め、随分と酷く降り始めたので傘と下駄を貸すことになった。
 その時、岩野泡鳴は友人が目の前にいるにもかかわらず、家人に向かって
「一番悪い下駄を出すんだよ!」
 こういう事を平然と言えるところに、岩野泡鳴の凄さがあった。

『大正人物逸話辞典』

 岩野泡鳴は「自然主義」の極北というべき奇人で、小説が私生活なのか、私生活が生活なのか、わからないほど、乱れた生活を送った。

 その凄まじさたるや、年表などを見ると判るが、浮気などは朝飯前で、メロドラマ顔負けの乱行を平然と行った。

 芸妓と淫乱三昧の日々を過ごす、愛人との痴情のもつれで愛人が自殺未遂を起こす、放浪に出る、金欲しさに工場経営を思い立ち失敗する――

 とんでもない人物であるが、それらの経験を全て小説に消化して、次々と当たり作を出した所を見ると、天才と狂気は何とやらといった所である。

 そう考えると、文アルはよくこんな人物を取り上げる気になったものである。全国の子女が知ったらさぞ飛び上がる事であろう(もっとも管理人はこのゲームが嫌いなのでどうでもいいが)

 凄まじい色欲や憎悪にまみれた男女関係の小説が代表作であるが、様々な界隈を渡り歩いただけか、色々と情報に詳しく、芸人の悲哀を書いた「猫八」や障害児殺しを描いた『背中合わせ』などといった異色作、戯曲や新体詩などを書くなど、才覚を見せている。

 そんな岩野泡鳴であるが、性格は当然おおざっぱ――そのくせ、変な所で計算高く、几帳面であったというのだからおかしい。

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