なぜ落語家の芸名には犬の字がないのか(都新聞芸能逸話集)

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なぜ落語家の芸名には犬の字がないのか

圓生、圓蔵親子が火鉢を挟んでの物語り、圓蔵が「どうも不思議でならないんですが、ハナシカの名前に、馬の字がつく名は沢山ありますが、どうして犬の字のつく名は一つもないんでせう」と云ふと圓生「お前はあたまが悪いネ、馬と鹿とは切つても切れねえ縁があるが、○に行つて見ねえ、鹿と犬とは敵同志だ」

1934年1月3日号

 原紙の破損の為に読めない部分がある。ご了承願う。

 ここで出てくる圓生・圓蔵親子とは、名人として謳われた五代目圓生とこれまた名人として知られる六代目圓生である。

 二人は実の親子ではなかったが(六代目は連れ子)、「親父」「お前」という関係を保ち、基本的には円満であった。

 シカとは、「噺家」を洒落て言ったものである。ちなみに落語協会のキャラクターは鹿である。古くから落語家を鹿に見立てるのは多い。

 鹿と馬が仲がいいのは「バカ」だからというのは落語らしいところ。ちなみに馬という字を使った落語家は沢山いる。円馬、馬生、金馬、志ん馬、馬の助、馬楽、ぜん馬、さん馬、里う馬……と多い。

 一方、犬の付く落語家はあまりいない。春風亭柳条がフリー時代に「忠犬亭はち好」と名乗った程度で、犬の名跡はほとんど見られない。

 圓生はこれを犬と鹿は狩るもの、狩られるものだから仲が悪いと論じているが本当だろうか。

 もっとも、江戸時代から戦前にかけて犬という言葉にはいい意味がなく、「権力の犬」「犬畜生」という言葉もある。一方、馬は神馬、絵馬とめでたい動物として扱われてきた。

 そういった縁起かつぎを含めて名乗っているのだろうか。いずれにせよ、この親子只者ではないですね。

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