田山花袋のキレどころ

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田山花袋のキレどころ

 国木田独歩が死んだ際、関係者が弔問にやってきた。
 田山花袋や小栗風葉が独歩のお骨の前で座っていると、泥酔した真山青果がフラフラとやってきた。
 そして、花袋の顔を見るなり、「田山先生、あなたは国木田独歩の友人ですか?」と嫌味をいう。
「親友が瀕死の重症の時に芸者遊びをしているとは何事だ」と延々と絡み始めた。
 花袋は嫌な顔をしたが、真山の相手をせずに黙り込んでいる。その態度が真山の癪に障るのか罵詈雑言は一層激しくなる。
 耐えられなくなった小栗風葉が「おいおい、真山よせよ」と仲裁を入れようとすると、真山青果はすごい剣幕で「なんだ、貴様なんかすっこんでろ」と風葉を突き飛ばそうとするや、これまで黙り込んでいた花袋が激昂をはじめ、
「貴様とは何事だ! 小栗はいやしくも貴様の師匠じゃないか!」
 と、真山青果と大喧嘩を始めた。
 真山青果は肌脱ぎになって大暴れをするので手がつけられない。
 最終的には柳田国男の弟、松岡静雄が羽交い締めをして突き出して一件落着をしたが、田山花袋はいつまでも嫌な顔をしていた。

『現代日本文学全集100』

 田山花袋は良くも悪くも我慢強い性格で、そういった懐の大きさも、自然主義という嫌われる界隈にいながらも、遂に毛嫌いされなかった一因となったという。

 また、「自分の事をとやかく言われるのは我慢できるが、他人がどうこう言われるのは好かない」と、自分よりも他人のために感情をあらわにできるのも、慕われた一因であろう。

 一方、小栗風葉と真山青果は、師弟関係にもかかわらず、両者が貶し合い、時には取っ組み合いをする――というこれも不思議な関係であった。

 義侠心の強い花袋が、こんな姿を見れば起こるのも当然であろう。

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