おとぼけ菊池寛
菊池寛は経営者としても成功した作家であったが、よくも悪くも実利的で雑学をため込むというタイプではなかった。
そんな菊池寛のお話。
講演旅行で九州へ行った菊池寛。「見晴らし」という名前の料亭を見つけ、同行していた大佛次郎に、
「大佛君、九州では景色のいい事を見晴らしがいいっていうんだな」
大佛次郎呆れて、
「そりゃ日本全国でいうでしょうよ」ある時、タレントでエッセイストであった徳川夢声と旅行をした菊池寛。車の中で夢声があれこれ木の名前を話していたら、菊池寛はやたらに感心して、
『問答有用』
「徳川君は植物学者だね。僕なんかはろくろく木なんか知らないから、小説の中じゃ木々が青々としているてなことしか書かんよ!」
菊池寛は、『恩讐の彼方に』等の小説を書き、芥川龍之介との交友が有名であるが、今日では文芸春秋の創業者であり芥川賞・直木賞の創設者として知られているだろうか。
幼い頃から苦労をして、一躍文壇でも指折りの成功者になっただけあってか、よくも悪くも親分肌的。多くの作家から慕われた。
当人は芥川龍之介などの優秀さや苦悩を目の当たりにしたせいか、おとぼけを装う事が多かったという。その本性はクールな経営者だったのだろうが、あえて三枚目気質になってみる所に、菊池寛のうまさがある。
そんな菊池寛の素顔を伺わせる逸話。
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