猫を買いに行くとは何のこと? 馬場孤蝶

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猫を買いに行くとは何のこと? 馬場孤蝶

 馬場孤蝶は芸者と遊ぶのが好きで金ができると遊びに行く。
 ある日、芸者遊びをしたくなった馬場孤蝶、財布を片手にふらりと外に出ようとすると、子供が「父ちゃんどこへ行くの?」と尋ねてくる。
 まさか「芸者を買いに行くのさ」とはいえない。困っていると妻君が助け舟を出してくれ、

「父ちゃんは猫を買いに行くのさ」
 猫とは芸者の隠語である。

 うまいこと言ったものだ、と感心しながら遊んで帰ってくると、子どもたちが袖にすがって、
「ねえ、どんな猫買ってきたの、猫はどこにいるの?」
 馬場孤蝶夫妻、困惑するばかり。

読売新聞 1908年12月13日号

 馬場孤蝶は慶応大学の教授などを勤め、衆議院に出馬するなどと国政や学術の内外で活躍し、大きな目玉をぎょろつかせながら、パイプを吹かすという――とても厳しそうな風格や人相を漂わせていた。

 しかし、話してみると、酸いも甘いも噛み分けた粋人で、なかなか粋な話の出来る人である。おしゃべりで、議論と読書が大好きで、馬鹿話を好む。

 熱血漢であるが、ユーモアを忘れない態度は好き嫌いの激しかった樋口一葉や斎藤緑雨からも信頼される所となった。

 そんな馬場孤蝶の意外な趣味が「芸者遊び」。今でこそジェンダーやらなんやらと炎上しそうであるが、明治時代~戦前にかけては高官や教授先生もこういう所を出入りし、盛んに遊んだ。

「宴会の一つも取り持てないのがお偉方とは笑わせる」といったような風潮もあったくらいで、当時の高官や財界人は芸事や歌の一つは覚えておいて、楽しく宴会をしたという。

 また、漫画もテレビもゲームもケータイもない時代、こういう事をして日頃のストレスを吹っ飛ばし、顔を合わせる機会にしていたのだろう。

 別に芸者遊びに関しては、当時の常識であったというより他はない。

 そんな孤蝶の行き違いや見栄を描いた、一編の小噺である。

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