黒砂糖と黒砂糖を混ぜると? 斎藤緑雨

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黒砂糖と黒砂糖を混ぜると?

『大同新聞』と『東京公論』が合併して「『国会新聞』と改称して、新たな新聞報道を目指す」を発表した際、緑雨は某誌で皮肉を書いた。
「黒砂糖と黒砂糖をまぜてもやっぱり黒砂糖」
 記者たちは「けしからん」とカンカンに怒ったが、幸田露伴は「実に名人だ」と感心した。

 露伴は「緑雨は神経質で内気だったから、口では啖呵を切れなかった。それだけに文章では鋭く出たのではないか」と分析をしている。

幸田露伴『斎藤緑雨君』

『大同新聞』も『東京公論』も、明治時代に発行されていた政治系の新聞である。大同新聞は、前進を「政論」といったがちがちの政治新聞で、『東京公論』も暗殺された星亨が立ち上げ、朝日新聞の村山龍平が買い取った新聞社で、やはり政治系であった。

 両者共に政府批判や政治批判を旨とし、事あるごとに政府の対応を批判。時には弾圧される事もあったという。

 そうした活動や態度に感動や感銘を覚える人もいる一方で、報道や「自由」の陰に隠れて放言ばかり繰り返している新聞社の対応に反感を覚える人もまたいたそうである。

 そうした新聞社の虚栄を見事に貫いた皮肉といえよう。黒いもの、汚いものはこの世にたくさんあるが、あえて「黒砂糖と黒砂糖」という取り合わせで、新聞社同士の「合同」と称した甘い癒着を指摘した点は、やはり名人芸といえる。

 この一言だけで、緑雨の鋭さやセンスが光るというものではないだろうか。

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