大胆な改作もご満足の上田浪六

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大胆な改作もご満足の上田浪六

 高田保は村上浪六の作品が好きで愛読していた。
 浪六がまだ健在だった頃、浪六の代表作「当世五人男」を当時人気の劇団・新国劇で、劇化する事になった。

「しかし、この作品は明治の話だろう。面白いけど、如何にも時代錯誤がありすぎる」
 と座員とともに話し合い、浪六の原作とはかけ離れた筋で脚本を作ってしまった。
 流石に悪いと思った高田保、関係者に「これは俺の創作物なんだけど、村上浪六原作、高田保脚色にして、人物の名前はすべて浪六のを使うことだけ許可を得てくれ」といった。
 許可を得たものの、「わしも見に行く」という話になった。
 原作には一切ない要素――黒豹が逃げるわ、昭和の風俗が出てくるわ、原作ぶち壊しのそれに浪六が激怒するのではないか、とヒヤヒヤしたが当の浪六、
「うん、わしの書いたとおりだ。わしがいま書くならああ書く」
 と、ご満悦であった。

高田保・坂口安吾・尾崎士郎座談会『オールサロン』

 村上浪六は、明治から昭和にかけて50年以上活躍を続けた大衆作家。高田保は戯曲家出身のユーモア作家である。

 村上浪六は、明治時代から講談や戯作調の良くも悪くも古風な作品を書いたが、それがまた文学とそこまで縁のない民衆や関係者たちに親しまれた。

 平易ながらも、鋭く観察をする書き方には、多くの大衆小説作家に影響を与えた。

 一方、高田保は、演劇よりも皮肉や随筆、ユーモア小説に驚くべき才能を見せ、戦前戦後の一時期、連載を掛け持ちするほどの流行作家となった。

 そんな元祖流行作家と後年の流行作家の二人の不思議な逸話である。

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