ヌシのいる淵に飛び込んだ黒岩涙香
神罰が存在するのかどうか確かめるべく、御札を踏んで見せて、「やっぱり迷信だ」と一笑したのは、福沢諭吉であるが、それに負けず劣らずの存在だったのがジャーナリストで推理小説作家の黒岩涙香。
『近代文学研究叢書19』
自分の生まれ育った村の隣に、伊尾木村という所があった(現在の安芸市)。この村には3つの淵があったのだが、その一つには、ヌシがいるとも、大蛇が巣食っているとも言われていた。
村人たちはこれを恐れ、流石の悪童たちもこの淵に近寄る事がなかった。
このうわさを聞いた十五、六歳の涙香、真実かどうか調べるべく、隣町まで行って、村人たちが制するのを飛び込んで見せた。
村人たちが度肝を抜かしたのはいうまでもない。
なお、普通の淵であったという。
黒岩涙香は、「マムシ」と綽名されたように、一度疑問に思ったら簡単には離れようとしない意志の強さと執拗さがあった――という。
そういった才気煥発な所は子供のころからあったそうで、良くも悪くも活発な行動や発言に大人たちがたじたじになる事も多々あったそうである。
後年の「マムシ」の原点を見るような逸話ではなかろうか。
他の「ハナシ」を探す
コメント