二葉亭四迷のメガネイズム
二葉亭四迷は極度の近眼で、眼鏡が手放せない人であった。今日遺された写真を見ても、その大半は眼鏡をかけている。
大庭柯公『二葉亭の一面』
その近眼のせいで、人違いをしたり、店を間違えて随分とそそっかしい粗忽をなした。そのくせ、眼鏡には不思議な愛着を持っており、常に二種類の眼鏡を持ち歩いていた。
一つは鉄縁の普通の眼鏡。写真に残っているそれである。
一方、懐中には「金縁の眼鏡」をしまい込んでいて、新聞記者としての対面や上流階級と会う時には、これをかけていたという。
おかしいのは、家や会場の前まで普通の眼鏡をかけておきながら、入る直前に金縁をかけ直していたという事。
関係者が呆れていると、二葉亭は「おれだって、ちょっとこんな芸当はするさ」と笑ったという。
二葉亭四迷は、なかなかに気性の激しい性格で、人目をよく気にしたという。良くも悪くも純粋で、変に指摘をされようものなら激昂、絶縁も多々あったという。
そういった我が道を行く気性が、あのような「言文一致」という大冒険を成し遂げたのではなかろうか。
そのくせ、人を食った所があり、そこがまた面白い所である。
そんな二葉亭四迷のお茶目な面を見る逸話といえようか。
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