女房に何をとられるか中村時蔵(都新聞芸能逸話集)

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女房に何をとられるか中村時蔵

時蔵は新歌舞伎座の「戻橋」の鬼女では腕を取られ、明治座へ駈つけると「瘤取り」で瘤を取られる、さて家へ帰って細君にあげ足でも取られるのかと聞くとイーエ、どう致しまして、もう身も心もすつかり取られてしまひます……に客ダーッ!

1934年3月11日号

 三代目中村時蔵は、戦前戦後を代表する名女形である。ほっそりとした瓜型の顔、寂しい目つき、哀愁帯びたセリフ回しという武器を持った女形であった。歌舞伎界の古老に「時蔵はヒーヒー泣く役がうまい」と称されたように、丸本狂言に独自の味を出した。

 舞台では悲劇的な女性を演じる事の多い時蔵であったが、当人は感傷的な役よりも「戻橋」「茨木」というような鬼に変身して舞台で暴れまくる役の方が好きであったというのだからおかしい。

 この時蔵、ひなという女性と結婚し、10人以上の子供を儲けた。男の子だけでも五人おり、戦後の映画スター、萬屋錦之介と中村嘉葎雄はその末の子供である。

 女形だから家では粛々とした夫婦――と思いきや、時蔵は大の遊び好きでせっかち、ひな夫人はのんびり屋なので、いつも喧嘩をしていたという。意外な一面ではないか。

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