落語・りんき専門

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りんき専門

上方落語でおなじみの喜公が凸山さんという男の家を訪ねる。
雑談の中で、喜公は、
「あなたの奥様はあなたを愛していますか?」
と尋ねると、凸山くんは、
「妙なことを聞く男だ、僕を愛すればこそ、朝夕口やかましく些細なことで、ヤキモチを焼いてくれる」
 と惚気ける。
 喜公はそれを聞いて羨ましがり、自分の女房は全然嫉妬してくれない、ぜひとも凸山くんの奥さんと代わってもらいたい、などと無茶をいう。
 凸山くん、
「そんな馬鹿なことができるものか。しかし、君誰でもよいなら、この向こう横丁にりんき専門という看板がかかげてある小意気な家があるから、そこへ行ってやいてもらったらどうだね」
 と、喜公の発言に呆れながらも助言をくれた。
 喜んだ喜公は、凸山くんを連れて、早速、件の「りんき専門」の家を尋ねる。
中に入ると、医者風の先生と助手が出てきて、それぞれ「りんきの診察室」なる部屋に通される。
 喜公は診察室でりんきの見本を見せていい気持ちになり、凸山くんも別の部屋で診察所で取り扱っている奥様連中のりんきの見本を研究して感心する。
 そこで両人は、「一度にヤキモチを焼いてくれ」と二人同じ部屋にとどまって動かなくなる。仕方なく、先生と助手で「まとめて焼きましょう」という。
 凸山くんが「僕が先生で喜公が助手くんが焼くのですか」と尋ねると、先生は「いいえ、私がご両人一緒に焼いて、足りないところを助手が焼きます」
 納得行かない凸山くんが、「それじゃ不公平な焼き方はしないでしょうか」に、先生平然と、

「ご心配なさいますな、助手と一緒ですからりんきおうへん(臨機応変)にやります」

『読売新聞』(1933年6月12日号)

 りんきとは「嫉妬」「焼きもち」の事。焼きすぎるとヤンデレみたいになる。

 桂小文治がやったネタ。

 りんきを主とした噺には、「りんきの独楽」「りんきの火の玉」などがあるが、大体りんきの酷さに振り回されることが多い。

 一方、この噺は、「りんきは愛おしい」という視点で描いている。斬新というか、なんというか。

 しかし、「焼きもち」が束縛だのと目される時代では、復活も難しいのでなかろうか。

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