落語・売り物違い

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売り物違い

 世の中が変わってくると商売ごとのやり方も変わってくるのは世の常である。
 縁日の出店なども昔とはずっと変わってきた。近頃人気があるのはバナナのたたき売り。
 向う鉢巻に肌脱ぎになって赤シャツなんかを着込んで勇ましい姿に、物差しのおばけのような棒を持って、バナナを並べた戸板を叩きながら景気のいい声で売り立てる姿なんぞはよくうけるものである。 
 一人のバナナ屋さん、親方のところの仕事に失敗して商売に出られず、家に引きこもっていたところ、仲間の売薬屋が慰めに来る。
 話を聞いた売薬屋は、親方に詫びを入れなんとか職場に復帰できるようになった。
 その晩のこと、薬屋さんは急用ができて夜店に出られなくなってしまった。そこでバナナ屋を代役として出すことにした。
 この薬屋さん、人体模型を取り出して臓器や部位を指し示しながら薬を売るわけだが、バナナ屋さんそんな事を知らずに、詫びがかなった一杯機嫌で大船に乗ってしまい、フラフラと現場へと行ってしまった。
 初めはうろ覚えの口上で説明していたが、酒に酔ってきたことやら野次やらを受けて、人体模型を取り外して、山をこさえ、
「さあ、いくらだ」
 と、バナナのたたき売り式にやり始めたからたまらない。聞いていた客は驚いたが、その頓珍漢な口上とセリフにワイワイと囃し立てる。
 バナナ屋さん、めちゃくちゃに話しているうちに模型の胃袋を壊してしまう。
 それを取り上げてすかさず、

「あらしまった。こりゃ金継ぎしなければならない」

『読売新聞』(1928年10月31日号)

 林家三平の父、七代目林家正蔵が柳家小三治時代にやったネタ。

 昭和初期に啖呵売で人気があったバナナのたたき売りをネタにしたもので、当時の風俗を色濃くネタにしてる。

 原作者は友人であった五代目古今亭今輔(柳家小山三)だろうか? 

 古今亭今輔が柳家小山三時代、これに似た話(題名不明とある)をこさえて演じて大喝采を受けたが、テキ屋の顔役が楽屋に乗り込んできて「わしには面白かったが、中には気に入らぬというやつも居るだろう。近ごろの若い衆は気が粗くてねえ……」とやんわり脅され、平謝りした――という逸話が『昭和演芸秘史』にある。

 その噺によく似ているが林家正蔵が受け継いだのだろうか。それだとしたら『売り物違い』が正式名称になるわけ。

 発想としては面白いがバナナのたたき売りがほとんど姿を消した今、やるにもやれないネタだろう。
 バナナのたたき売りのマネをする芸人とカプリングすればいけないことも、ないか。

 柳亭風枝氏あたりなら一人二役で出来るかも知らん。

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