落語・雁つり

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落し話・雁つり

 怠け者の与太郎くんは今年小学校卒業したばかりなのに遊んでばかり。
 他の同窓生は上の学校へ行くものもあり、就職戦線に乗り出してお国のために尽くす人が多い中で、与太郎くんは相変わらず遊び呆けている。
 これを見て呆れたのが父親。与太郎を捕まえてコンコンと諭すと、与太郎くんも思うところがあったのか、奮然として一つの商売を企てる。それが「雁つり」であった。
 夕方になるとお寺の池へ沢山の雁が飛んでくるのを知っている与太郎くん。夜中にそっと池に忍び寄って、雁たちの足を縄でくくりつけた。
 そして、片一方の足にその縄をくくりつけて「これで安心」と笑ったのは良かったが、やっぱり与太郎は与太郎で、その場で眠り込んでしまった。
 次の日、朝を知った雁たちが一斉に飛び立っていく。
 一斉に飛び立てられてたまらないのが与太郎くん。あれよあれよという間に体は宙を浮き、空を飛んでしまった。
 そしてなんとか五重塔の九輪にすがりついて、片手で縄を解いたのでなんとか助かったが、今度は下りられなくなってしまった。
 与太郎くん、「助けてくれ」と大声で叫ぶ。街の人達が気づいてとんできたが、助ける術がわからない。
 そのうち、知恵のある人が野球のネットを借りてきて、これを広げ力強い人たちに持たせると「ここに降りてこい」といった。
 与太郎くん、喜んで五輪塔から飛び降りたが、あまりにも勢いよく飛び降りたせいで、ネットを持っていた四人が弾力で引っ張られ、コツンと鉢合わせになった。
 その四人から激しい火花が飛び散って、与太郎くんは火傷をする羽目になった。

『読売新聞』(1932年1月26日号)

 昔話の『鴨取り権兵衛』と『鷺とり』(東京では雁とりともいう)を混ぜて、子供向けにしたような、改作をしたような、不思議な作品である。

 元ネタがしっかりしているだけにそれ相応に面白く読める。

 しかし堅物でしっかりした話術知られた林家正蔵がこんなネタをやっているとはねえ。

 あの苦虫を噛み潰したような、大真面目な顔をして「小学校卒業した与太郎くんが……」などと子供に訓示してるだけでも噴き出してしまう。

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