貸間

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貸間

 郊外の若夫婦の所に書生が貸間の間借りに来る。
 亭主は「電燈付きで十円。ご飯付きなら九円。」という。
 書生はその条件を飲むものの、「ご飯付きで安くなる」という理屈が判らない。普通は飯付きなら料金がつくはずである。
「どうして飯付きが安いんですか」
 すると旦那は「恥ずかしい話だが……」と、その理由を話し始める。
 細君は優れた女で、仕事も家事もよくこなすが、料理だけはあまりにも不得意で、悲惨なものが出来上がる。それを食わされる旦那は頭痛のタネであるという。
「そういうわけで、食事を少しでも食べてもらえるなら安くしようと思うのだ」
 とボヤく旦那に対し、書生は万事納得し、

「それでクエン(九円)というわけですか」

『読売新聞』(1937年6月20日号)

 明治生まれの最後の生き残り、古今亭志ん好が柳家三寿時代に演じたモノ。

 この古今亭志ん好は中々創作の才能があって、『押し売り』『貸間』『音曲』などをレコードに吹き込んでいる。

『貸間』も1936年11月ビクターから発売をされている。復刻されて聞けるはずではなかったか。

 戦時中廃業し、しばらく千葉にいたが、周囲の勧めでかつての兄弟子で名人となった古今亭志ん生の門下に入って「古今亭志ん好」。

 古いネタを知っており、音曲も百面相や珍芸もこなす達者な人であったが、皮肉屋のきらいと熱演のあまりに時間をオーバーする気質から、寄席からは嫌われ、色物席やお座敷が専門であったという。

 晩年は落語界の最長老として活躍。90余りの長命を保った。

 さて、「貸間」であるが、多くの芸人が出る落語の中継放送だったせいもあってか、そこまで長い話ではなかった模様か。

 あらすじやレコードを聴く限りでも小咄を少し伸ばしたような形にしか見えない。

 当時の郊外に住む金満な夫婦という設定は面白いが、オチも凡百で、なおさら「細君が家事一切や料理をやらねばならない」という価値観がジェンダー論にぶん殴られそうである。

 もっとも不謹慎あっての落語なので、その辺りは別に忖度する必要もなさそうだが――

 うんとうんと縮めて簡単な小咄にすれば、一応やるだけやれる噺、という評価に留まるか。

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