落語・猩々

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猩々

 子供は年を重ねるごとに「なぜ、なに」という知的欲求が高まっていく。これに大人が答える事ができれば、子供も立派に成長するのだが、そう行かないのが落語のお決まりで――
 学校から帰って来た金坊、家に帰ってくるなり、「ジャンヌダルクってどんな人?」と聞いてきた。
 喧嘩と仕事は早いが如何せん勉強はからっきしの熊さんは、息子のお尋ねに困ってしまい、「ジャンヌダルクは昔の偉い人だろう」と適当に言ってごまかそうとする。
 しかし、これでは金坊がおさまるはずもなく、「なぜ、なに」を連発する始末。余りにもしつこく聞かれるため、遂にごまかしきれなくなった熊さんは、「ちょいと出てくる」と外に出た。
 道端でばったり出会ったのが、物知り博士で知られる源さんという男。源さんに「ジャンヌダルクってなんだ?」と尋ねると、源さんは「ジャンヌダルクか。そりゃ昔のヨーロッパにいた勇敢な少女で……」と懇切丁寧に教えてくれた。
 これで一安心、と熊さんは胸を張って帰宅する。そして、金坊に「ジャンヌダルクはな……」と講釈をはじめるが、如何せん付け焼刃の知識のこと、外国の名前が入れ替わる、戦の名前が入れ替わる、挙句の果には火あぶりと合戦まで入れ替わってしまい、金坊を呆れさせてしまう。
 それでも大体推量した金坊は、「そんなに強い女の人だったら剣術でもやっていたのかしら?」
「いや、剣術は知らないが、女だから食いつく、ひっかくという武器があったそうだ」
「まるでゴリラだね」

「それはゴリラではないが猩々(少女)だからさ」

『都新聞』(1939年7月24日号)

「猩々」は柳家金語楼の弟、昔々亭桃太郎が作って演じた作品。古典の「浮世根問」「魚の狂句」「半分垢」といった付け焼刃の知識でぼろが出る作品のエッセンスを取り入れた作品である。

 内容は古典の焼き直しという印象が強い。ジャンヌダルクという言葉以外の構成は基本的に古典に忠実な形となっている。

 猩々というと、能楽や浮世絵に出てくる不思議な獣が想像されるようだが、ここでいう猩々とはゴリラやチンパンジーといった霊長類の事を指している。昔はこれらをまとめて猩々といった。それと「少女ジャンヌダルク」をかけているが分かりづらい落ちではある。

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