落語・二人おかる

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二人おかる

 忠臣蔵のヒロイン的存在といえば、早野勘平の妻で落人や七段目で華やかなところを見せるおかるであろう。
 昔のおかるの演じ方と、今のおかると演じ方が違うように、昔の女性と今の女性も違う。
 橋の上から身を投げようとする芸者風の女。これを鳶の頭が抱きとめる。訳を聞くと、
「菊次郎という役者に惚れて一緒になろうと思ったが邪魔が入って一緒になれなくなった。添われないなら死んでしまおう」
 と嘆く。
 これを聞いた頭は義侠心をおこして、菊次郎と芸者を添わせてやった。
 さて二人一緒になったのはいいが、落つるに欠けるは世の習い。ある綻びから生活は破綻、菊次郎が土左衛門(水死体)になって帰ってきた。
 戸板に乗せられた菊次郎を見るなり、芸者は癪を起こして倒れてしまった。
 しかし今の女性は違う。
 花街に身売りされたお軽が兄の平右衛門に勘平のことを聞く。
「勘平さんはどうしたの?」
「おめえの色男かい。あ奴は借金の催促におわれて、それを気に病んでとうとう猫いらず(※毒薬)を飲んで死んじまったよ。今日の夕刊を読んでみろよ」
 嘆く平右衛門をよそにお軽は、
「あら勘平さんなんか嫌いだわ。あんな非男性的で甲斐性のない男……それよりも洋食屋のまっちゃんが好きだわ。お金に明るいし、自転車も手放しで乗れる」
 と上の空。呆れた平右衛門が、
「何いってんだ。勘平の葬儀には二百円もかかるそうなんだぞ」
 金を聞いたお軽、その大金に目を回して気絶をする。

「今の女はこんなもの」二人おかるの一席。

『読売新聞』(1926年5月3日号)

 柳亭左楽がやった噺。当人が「二人おかるは自分が作った」的な発言を晩年しているので、左楽のネタで間違いないだろう。

 ある意味では漫談的なネタで、芝居の「おかる」をひっかけて、今どきの女性をネタにするというもの。

 しかし、そもそも「七段目」がマイナーな存在となってしまい、女性をあれこれ言うと批判される当節ではまず無理だろう。

 ネタとしても、はっきり言えば面白くない。

 古今亭今輔の『お婆さん三代姿』くらいの批評性や「同じことの繰り返し」という題材がハッキリして居れば残ったかもしれない。

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