落語・雪月花

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雪月花

 ある呉服屋にやってきたお得意のお客、二人の朋輩を連れているので、店側は喜んで「毎度ありがとうございます。これこれ、お茶を差し上げなさい」と、おおもてなし。
 客は一服しながら、
「どこも変わった遊びがなくて困ったもんだが、やっといい趣向が思いついた。ここにいる三人で雪月花というなり拵えをあつらえて吉原にくりこもうというものだ。わしが春で花、この男が秋で月、あの目玉のギョロリとしたのが冬で雪なんだが、どうかそういう見立てでなりをこしらえてもらいたい」
という注文。呉服屋は了承してあれこれと思案を始める。
 春は普通の着物を作ったが、同じ手は秋では使えない。そこで出したのが胴着に裏地が寄せ切れの誂え。
「胴着の裏に寄せ切れのあつらえとはいかがさまで。」
「冗談いっちゃいけない。派手な所へ行くんだ。みっともないことはできない。これのどこが秋なんだ」
「へえ、そこもかしこもハギ(接ぎ)だらけでございます」
 冬に回った男は短気な性分で、
「おい、俺のはどうした。いつまで秋の趣向を相手にしてるんだ」
 などとイライラしてる。呉服屋は男の方を向いて平然と、

「まあまあ、もうしばらくお待ち下さりませ。只今ゆき(裄)をつもらせております」

『読売新聞』(1926年9月8日号)

 三遊亭円朝の小咄。円朝は門下や仲間たちと雪月花にちなんだ小咄をよく作っていたそうで、その集大成が『雪月花一題噺』なる本にまとめられている。

 出来の方は……読者におまかせするが、三遊亭一門では貴重な噺として伝承されていたらしく、孫弟子たちにも伝播された。

 オチが分かりづらいが着物の採寸である「裄(ゆき)」を「雪」とかけたもの。着物が廃れつつある今ではやって受けるだろうかね……?

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