関東節の古顔・浪花亭奴(三代目)

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関東節の古顔・浪花亭奴(三代目)

 人 物

 浪花亭なにわてい やっこ(三代目)
 ・本 名 磯崎 鉄之助
 ・生没年 ??~1961年以降
 ・出身地 ??

 来 歴

 浪花亭奴(三代目)は戦前戦後活躍した浪曲師。関東節の古顔的な存在で、粋で哀愁のある関東節を武器に侠客物、お家騒動物と幅広く読みこなし、長い間堅実な人気を築いた。

 経歴は謎が多いが『読売新聞』(1930年4月9日号)にわずかであるが出ている。

 初放送の浪花亭奴は関東派の元老浪花亭〆太の門下廿二歳の時真打となって今日に及んでゐる古看板である得意なものは天一坊やけふ語る大久保三政談等である

 この浪花亭〆太というのは、関東浪曲界の源流である浪花亭駒吉のセガレ――ではなく、その〆太の弟子であった「浪花亭奴(初代)」の事。

 この奴は、師匠没後に「二代目〆太」を襲名し、弟子に「浪花亭奴」を譲る形となった。

 二代目は「鷹造」という浪曲師が名乗っていたが襲名後間もなく名前を返上したために「浪花亭鉄右衛門」と名乗っていた彼が三代目を襲名することとなった――と『浪花節一代』にある。

 入門時、〆太は「浪花節親睦会」という一座を組織しており、ココで芸を磨いた。師匠が粋な関東節を得意とした関係からこの呼吸や話術を学びこんだという。

『天一坊』『大岡政談』『荒木又右衛門』『太閤記』などといった武芸物やお裁き物を得意とし、粋でいなせな節と威勢のいい啖呵で関係者を感心させた。

 一時期、「なかよし会」と称して、浪華軒〆友、木村松太郎、玉川次郎(二代目勝太郎)、桃雲閣呑風、雲井雷太郎などの、若手真打と一座を組んで勉強会を行っていた事もある。

 1918年3月、深川広得館・桜館で「浪花亭奴」を襲名した模様か。

 1920年頃、木村重友から破門された平田市太郎を引き取り、「浪花亭〆奴」と名付けて一枚看板として売り出している。〆奴の芸を見込み、娘を娶らせて娘婿にしたほどであった。

 1922年に発表された『關東關西浪界名家番附』の番付では前頭30枚目。微妙な数とも解釈できるが、木村重友が前頭筆頭、東武蔵が3枚目、松風軒栄楽が5枚目――と云うなんでもありの並びなので、一段目にいる事自体が凄いことである。

『浪花節一代』の作者・三好貢は全盛時代の奴の芸を――

 つづいて住吉で聴いたのは浪花亭奴(三代)で、彼の全盛時代だった。「徳川天一坊」における品川は八つ山下のくだりで、山内伊賀亮以下を随え、晴れ?の江戸入りをする供揃いの姿が、ドスの利いたこのひと特有の合の子節でいとあざやかに描かれたのだった。

 と、激賞している。

 1928年の番付では、前頭18枚目。寄席打ちの名人と謳われた春日清鶴の前にそびえているのですごい。

 1930年4月9日、JOAKに出演し、「大久保彦左衛門」を放送。

 1931年3月6日、JOAKに出演し、「天一坊」を放送。

 1931年の番付では「若年寄」という特殊な地位に置かれている。

 1933年11月27日、JOAKに出演し、「笹野権三郎」を放送。

 1935年7月22日、JOAKに出演し、「大久保政談」を放送。

 1936年9月20日、JOAKに出演し、「伊賀の水月」を放送。

 1937年の番付では「東西検査役」。

 1938年2月6日、JOAKに出演し、「松前屋調べ」を放送。

 1939年3月31日、NHKに出演し、「剛腹一千石物語」を放送。

 戦後も浅草の劇場や焼け残った寄席に出演。正岡容は『川柳祭』(1949年6月号)の中で、浪花亭奴の芸を聞いた時の想い出を掲載している。

 私が子供のとき、浅草不二館で浪曲大会があって、松風軒栄楽が「伊賀の水月」を読み、その前に梅林龍と浪花亭奴がでた。龍の演題は忘れたが、奴はいろ変りの羽織を着てでて「太閤記」を読んだ。あれからもう三十年以上になるが、不思議に私はその日の舞台をおぼえてゐる。以来、私は奴を巧いとも拙いともおもへない存在として記憶しつづけてゐたのであるが、今度聴いたやはり「太閤記」の岩倉山夜攻は、秀逸だった。余りいいフシではないのにそれがチャンと活きて、啖呵も愉しく、殊にセメは夜陰の騎馬武者がおよそまざ/\と活写した。ここのお客たちにもなか/\受けて、喝采してゐた。このおもひでを持てたことは奴にとっても私にとっても倖だった。

 1954年の番付では「検査役」。

 1957年に刊行された『浪花節一代』では「浪花亭一門」という項目を口述している。

 1961年の番付では「検査役」。この頃まで健在だったのは確か。

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