落語・里帰り

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里帰り

 田舎から都会の学校へ進学した男、無事に学校を卒業し、月給取りになったのはいいが、親に内緒で結婚し、娘までこさえてしまった。
 実家からの「たまには帰ってこい」という催促も断り切れず、娘が生まれて三年目、「結婚して子供が出来た」と偽って初めて帰省をした。
 親子三人、モダンな恰好で里帰りをすると、両親はすこぶる喜んでくれた。
「初孫の顔が見たい」
 というので、子供と対面させると、両親は目をぱちくりと、嫁さんに向かって、
「これが先月生れた子かい。俺はまたお前さんの妹かと思った」
 さらに、娘は「おじいちゃんおばあちゃんこんにちは」とあいさつをする。
 三歳なのだから、喋れるのは当然なのだが、何も知らない両親はまたまたびっくりして、
「おやおや、先月生れた子が口を利くよ、これはどういうわけだい」
 に、嫁さんは平然と、
「だってお父さん、スピード時代ですよ」
 といえば、両親は感心して、

「なるほど。東京の子はませているね。」

『読売新聞』(1936年2月2日号)

「里帰り」という落語は春風亭柳昇の名演で知られているが(意地の悪い姑に愛想をつかした嫁が、実家に帰り、姑への怒りを吐露すると、父親が『本当に憎いと思った時、これを飲ませなさい』と、薬を渡し……という筋。CDにもなっている)、これは全く別の噺。

 柳家金語楼の新作落語である。

 昭和初頭の「スピード時代」「高速時代」を反映した徹底的なナンセンス落語になっている。今でこそ信じられない所もあるが、発想としては面白い。

 しかし、春風亭柳昇の名作が同名である以上、同じタイトルのままでやるのはむずかしいのではないだろうか。

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