いたずらあひると上田萬年

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いたずらあひると上田萬年

 上田万年が向柳原に転居した際、偶然近所に住んでいたのが緑雨であった(妹の家に転がり込んでいた)。
 ある時、小僧さんがやって来て「斎藤氏から転居祝です」と口上をいうと、祝の品を出した――が、それはなんと生きたアヒル。
 小僧はアヒルを玄関に置いたまま帰ってしまった。アヒルは見慣れぬ家や人のこと、ガーガー声を上げて暴れまわる。
 
上田一家は逃げ回るアヒルを捕まえるのに一苦労をしながら、
「緑雨も洒落がきつい」。

上田万年『故人緑雨』

 金田一春彦や新村出の恩師として、また明治維新の中で様々な日本語論や言語教育を論じた学者・上田萬年。今日では円地文子の父親としても知られた。

「東京帝國大學文科大学長」「帝国学士院」などと、何かと権威的であった上田であるが、斎藤緑雨とは幼友達で、緑雨が夭折するまで何かと気にかけていた。

 その仲は実に古く、青年時代、上田は「柳桜」、緑雨は「可笑」などという雅号で同人誌を出したほど。方向性が別れても、その親交は続いた。

 権威的学者と目された上田であったが、洒落っ気はあったそうで、緑雨もまたその洒落っ気に悪乗りする事が多かった。そんな二人のほほえましい友情を描いた一席。

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