都新聞芸能逸話集

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市川男女蔵ともやしの娘(都新聞芸能逸話集)

「市川男女蔵ともやしの娘 - 都新聞芸能逸話集及びその周辺」市川男女蔵こと、三代目市川左團次は跡継ぎに恵まれず、長い間悩んでいた。その末に養子を取った。それが今の四代目市川左團次である。これは四代目自身も公言しており、「自分は京都の出身で、父親が三代目の贔屓だった関係から養子に出された。長らく京都へ行くと母や兄三人と会っていた」。
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実の父親を知らぬ振りをする市村又三郎(都新聞芸能逸話集)

仁左衛門の倅、オット違つた、羽左衛門の養子又三郎、歌舞伎座の部屋では羽左衛門と家橘との間へ鏡台を置いて親子水いらずの圓満ぶりだが、たまに仁左衛門が部屋へ来ても又三郎ろくに口もきかず、仁左が出て行つた後で羽左衛門に、お父さん今の人はどこの人です……?はないでせう
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蒋介石よりまずい橘右近(都新聞芸能逸話集)

「蒋介石よりまずい橘右近 - 都新聞芸能逸話集及びその周辺 」橘右近は若禿で有名で30代にして既にツルツル、ついたあだ名が「坊主」なのだから立派なものである。まだ戦争が始まらない頃は日本兵や蒋介石の顔真似をして受けていたという。
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縁起を担いでも粗忽な桂小文治 (都新聞芸能逸話集)

「縁起を担いでも粗忽な桂小文治 - 都新聞芸能逸話集及びその周辺」桂小文治は粗忽で有名であった。そそっかしいのは並大抵ではなく、着物や服を忘れるのは当たり前、鼻をかもうとして紙幣を取り出して鼻につけたり、他人の下駄を履いて行って大騒動を起こしたりと、数限りなくある。
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吉右衛門の腸内はアゲハ蝶?(都新聞芸能逸話集)

中村歌六・中村吉右衛門家(播磨屋)の定紋は「揚羽蝶」である。中村一門に「中村時蝶」「中村蝶一郎」「中村蝶十郎」といった蝶の字が入るのはこの定紋からヒントを得てである。市川家が三升の紋から「升蔵」「升寿」といった名前を考案したり、尾上菊五郎家が扇の紋から「扇緑」「扇五郎」などとつける発想と同じである。
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林家正楽は寄席のバーナード・ショウ? (都新聞芸能逸話集)

松竹立花の楽屋で正楽が、顔合した誰れ彼れを相手に、持前の皮肉を弄してゐると、浪曲の瓢右衛門が、イギリスに何とかシヨウといふ有名な皮肉老人がいるが、貴公はさしづめ落語界のシヨウですネ、と一矢報ゐたはいゝが、その名を完全に思ひ出せず、ドツコイシヨウですかとまぜつ返されたりした後で、やつとバーナード・ショウと判つたンでは、この一矢一同に効目なし
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省略版の「桜丸切腹」は国技館の菊人形(都新聞芸能逸話集)

「省略版の「桜丸切腹」は国技館の菊人形 - 都新聞芸能逸話集及びその周辺 」鴈治郎追善劇に出てゐる大阪歌舞伎座の「佐田村」も時節の都合でカットに次ぐカット、登場人物大面食らひだが、何しろ幕が開くと、先づ浅葱幕、それを振り落すと梅王丸と松王丸が俵を持って大見得を切つてゐるといふ新演出、つまり兄弟喧嘩を幕開きに繰上げたのだが、左升がこれを見てびっくりし、これはまるで国技館の菊人形でございますネ
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風呂を買って風呂禁止令を出された玉井の可楽(都新聞芸能逸話集)

「風呂を買って風呂禁止令を出された玉井の可楽 - 都新聞芸能逸話集及びその周辺 」玉井の可楽こと七代目三笑亭可楽はある程度しっかりした腕を持ちながら、なかなか売れず貧乏暮らしを続けていた。そんな可楽は俳句と風呂に癒しを求めたという。俳句の腕前は相当で、落語家仲間の宗匠になる程。一方、風呂が趣味だというのは意外だった。
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女房に何をとられるか中村時蔵(都新聞芸能逸話集)

「女房に何をとられるか中村時蔵 - 都新聞芸能逸話集及びその周辺」時蔵は新歌舞伎座の「戻橋」の鬼女では腕を取られ、明治座へ駈つけると「瘤取り」で瘤を取られる、さて家へ帰って細君にあげ足でも取られるのかと聞くとイーエ、どう致しまして、もう身も心もすつかり取られてしまひます……に客ダーッ!
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市川染五郎の高い鼻とシラノ (都新聞芸能逸話集)

「市川染五郎の高い鼻とシラノ - 都新聞芸能逸話集及びその周辺 」明治座の染五郎襲名の口上で吉右衛門、鼻の高いのは高麗家と昔から言ひますが、もひ染五郎が鼻を高くするやうなことがあつたら、早速曲げて御覧に入れますと言ふ、染五郎にもし曲げられたらどうすると聞けば、「シラノをやります」