芥川龍之介流「美意識」講釈

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芥川龍之介流「美意識」講釈

 芥川龍之介が海軍機関学校の教師時代、同僚の数学教師と共に江田島へ出張をすることになった。
 時間を有ることを幸いに奈良に立ち寄り、法隆寺前の旅館に泊まった。
 しかし、その旅館は大変な古家で、電気が未だにランプで、雨音が聞こえてくるような代物であった。雨の夜だけあって、その不気味さは一層であったという。
 閉口する同僚に引き換え、芥川龍之介は平然としていて、それどころか、薄暗い部屋の中にある襖絵に感心していた。
 芥川はその感動を同僚に聞かせ、夜遅くまでその美しさを講釈した――まではよかったが、夜が明けてみると、そこにあったのは雨のシミであった。

『蜘蛛の糸』『杜子春』『羅生門』など、今なお教科書や文学入門に採用され、愛読される芥川龍之介。

 そのメランコリーな一生を含め、天才の名をほしいままにしたこの作家は、未だに人を惹きつけてやまない。師匠の夏目漱石、太宰治と並ぶビッグスリーではなかろうか。

 そんな芥川が独特の美意識や繊細さを持っていたのは、各資料や伝説から随分と知られているが、その美意識や繊細さがとんでもない粗忽を生み出す事もあった。

 芥川龍之介が美意識を研ぎすましたあまりに、頓珍漢な講釈をしてしまった一例が上の逸話の如し。

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