1908年に送られた「好きな飲料は?」アンケート

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1908年に送られた「好きな飲料は?」アンケート

 1908年、読売新聞が、当時の文士や文化人たちに「好む飲料はありますか?」とアンケートを送った。その答えが振るっているのが多く、面白いので、作家や有名人のいくつかをピックアップしてみよう。

 徳田秋声 好む飲料はと問はれかばやはり醇なる日本酒に御座候、但し多量には行けず聊か酒の趣味を解するとは申す迄に候

 東郷平八郎 好む飲料として別に御通知申上ぐる程のものなし
(記者がただし伯爵が日本酒の酒豪であることは世間で知られる通りと加筆している)

榎本武揚 清酒 ▲その理由は廉価にして味佳なる哉

巖谷小波 ビール、但し夏季 ▲うまい

福沢桃介 水 ▲天然物にて人工を加えざればなり

金子堅太郎 水、茶、コーヒー等 ▲必要というの外他に理由なし

夏目漱石 塩水 ▲好む飲料は別段無之候。只朝毎に塩水をコップに一杯飲み候。人がやって見ろと申した故に候。処がやって見ろと申す程の効能も無之様子故近々やめやうかと考居候

 昔、文壇や文化人たちが盛んにゴシップのタネとして扱われた時代があった。

 このアンケートなんか正にその代物である。卑俗といえば卑俗であるが、色々神格化されやすい作家たちの親しみやすい姿や本音を映し出していて、貴重な物である。

 当時軍神だの人気作家だのと呼ばれていた人たちにこれをたずねる度胸も凄ければ、これを答える方も答える方である。

 当時は「へ~~」くらいに笑って見ていたかもしれないが、今となっては偉人たちがこんなことを考えていたといういい資料になっている。皮肉といえば皮肉である。

 ここで面白いのはやはり小説家が少ない点である。当時すでに文壇も形成され、作家たちも続々出ているにもかかわらず、夏目漱石や巌谷小波など売れっ子作家しか答えていない。

 もっとも「下らねえ」という理由で返答しなかった作家もあるだろうし、「これはよくない」と編集部が贈らなかった作家もいるかもしれない。

 みんなそれぞれ個性が出ていて面白いが、「巖谷小波 ビール、但し夏季 ▲うまい」は本当にすごいいい答えだと思う。「うまい」を超える感情はない。ネチネチ理由を言わずに、ただ一言「うまい」。

 アンケートかくあるべし、である。

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