入湯直前でアイディアが浮かんだ岡本綺堂

[random_button label=”他の「ハナシ」を探す” size=”l” color=”indigo”]

入湯直前でアイディアが浮かんだ岡本綺堂

 岡本綺堂は潔癖な性格の持ち主で、アイディアが浮かぶと、すぐさまなにかに書き留めないと気が済まなかったという。
 ある時、銭湯へ行き、裸になっていざお湯へ浸かろうとした時、いいアイディアが浮かんだ。
 喜んだ綺堂、すぐさまUターンをして、着物を着て帰った。
 居合わせた人は「なんだいありゃ、気が違ったのか」と呆れる始末。
 その中に偶然、綺堂の知り合いがいて、「こんなこと言ってた」と綺堂に報告すると、「気が違ったとはひどい」と苦笑した。

鶯亭金升『明治のおもかげ』

 岡本綺堂は戦前を代表する劇作家であり、推理小説家であり、歌舞伎研究家である。

 元々は歌舞伎や戯作という伝統的な流れを汲みながらも、独学で英語や小説を学び、旧来の作品や物語に新たな風を吹き込んだ。

 今なお演じられる『修禅寺物語』『権三と助十』、日本の与力や奉行と西洋の推理小説を結婚させて生み出した「半七捕物帳」シリーズなど、その功績は大きい。

 また、幼い頃から見聞きした見識を生かして、多くの歌舞伎研究や評論を書き残し、これも歌舞伎研究の一助として大いに役立っている。

 多くの物語や遊芸に通じていた才人・綺堂であるが、私生活は慇懃そのもので、養子の経一にして「芝居の家に関わらず、父に関する面白い逸話は殆どない」と言わしめるほど、大真面目な人物であった。

 歌舞伎を愛しながらも楽屋や役者には近づかず、文壇や劇壇で相当名を成しながら、関係者と距離を置き続けた。

 そんな綺堂が珍しく残した、潔癖ゆえの失敗を感じさせる逸話である。

[random_button label=”他の「ハナシ」を探す” size=”l” color=”lime”]

コメント

タイトルとURLをコピーしました