羽左衛門とカステラ(都新聞芸能逸話集)

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羽左衛門とカステラ

羽左衛門が此頃、歌舞伎座の楽屋へ七ツ道具を持込み、頻とテンビで焼物に熱中、何んだと思ふとカステラで楽屋中、粉で真ッ白け、この間あるデパートで実演してゐるのを見て道具一揃を買ひ込み、楽屋で体の暇の時に焼いてゐるが、なか/\うまく焼けず、これは焼け過ぎだア、こいつあグチヤ/\だア、で、一銭銅貨ぐらゐのカステラ一つを焼くのに、玉子三十に砂糖を二斤くらい使うんだから、随分高値なカステラ

1934年10月12日号

この間も紹介した羽左衛門のカステラ焼、この頃ではすつかり秘傳を覚えて、三竈焼くうちに一タ竈だけ位はニガいほど焦しもせずに焼き上げられる腕前になつたが、斯くと聞いて大部屋連中、あすこのカステラもどうやら喰へるやうになつたさうだから、けふから弁当をやめて喰ひに行かうぜ、と長い幕間など羽左衛門の楽屋の前は蜿蜿長蛇の列、はさながら公衆食堂の特価デーみたい

1934年10月18日号

 戦前、二枚目・美男の代名詞として知られた「十五代目市村羽左衛門」。フランス人とのハーフという伝説さえ残る程の美貌ぶりは今なお語り草である。

 舞台では二枚目や優男の役を得意とした羽左衛門であるが、私生活ではなかなかお茶目で新しいもの好き、という子供のような一面があった。

 海外旅行が流行ると海外旅行へ行きたいと駄々をこね、香水が流行ると香水をふりまき、うまいという店には顔を出す、それでいて気取らない所が内外ともに慕われる一因であったという。

 そんな羽左衛門が、戦前実演販売を見て、急にカステラを作りたくなったという話。なお、ここでのカステラは今日でいう所のホットケーキに近いのかもしれない。

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