紀伊国屋づくし(都新聞芸能逸話集)

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紀伊国屋づくし

今月の新歌舞伎座はすべてこれ紀伊國屋づくめ第一の主人公が紀國屋文左衛門で、それを演る宗十郎が紀國屋、二番目の時雨炬燵では遊女紀國屋小春が出るのに、大喜利のかつぽれにだけは出ないのが不思議だと云へば宗十郎、その代り、あれは紀の国蜜柑船と唄つてゐます

1930年11月1日号


 1930年11月の東京新歌舞伎座は、宗十郎のお家芸「紀國文左大尽舞」、「筋交ひ道中」、「時雨の炬燵」、大喜利に「かっぽれ」という構成であった。

 この順で行くと、長谷川伸の『筋交ひ道中』は紀伊国と何ら関係ないのだが、これは市川八百蔵、小太夫の演目だったためかカウントされていない。

「紀國文左大尽舞」は右田寅彦の新作で、宗十郎の鷹揚な芸に合せて書かれたもの。「時雨の炬燵」は旧作で、浄瑠璃の「心中天網島」を書き改めたものである。紙屋治兵衛という商家の旦那が、紀伊国屋小春という女郎に迷って、遂に破滅をして心中をするというもの。

「かっぽれ」は、大道芸だった住吉踊をモチーフに書いた滑稽仕立ての踊りで、「あれは紀伊国みかん船」という歌詞は長らく寄席や大衆の間で知られたものであった。今日でも時折寄席やイベントで見ることができる。

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